メンタル | 東進ハイスクール 吉祥寺南口校 大学受験の予備校・塾|東京都

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2020年 12月 19日 メンタル

読む前の注意事項:

・結構長いので、全部読むのに時間がかかります

・ちょいちょい脱線します

・はっきり言って文章がくどいです

 

こんにちは、吉祥寺校の飯島です。最近寒くなってきました。寒くなると気が滅入りますが、とにかく手は止めずに勉強するんだ受験生。

ところでみなさん、受験勉強をしていると「メンタル的にキツくなる」ことってありますよね。でも、「メンタル的にきつい」とか、「メンタルにくる」とか、「メンタルが弱い」とか、そういうのってそもそもどういうことなんでしょうか?

ここで、読んでいるみなさんに問題です。とか言ってもほとんどの人が真剣に解こうとはしないと思いますが、考えてみて欲しいので出しますね。

 

: 「メンタルが強い」人とはどんな人か、あなたの考えを100字程度で書きなさい。

 

書きましたか?書いてみてください。書かずにこの先を読んでも構いませんが、「書いておけばよかった」と思うことになると思います。ここまで言えば書きますかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ということで、書いていただきましたでしょうか。現代文だか小論文だかわからないような問題だったわけですが、皆さんどんな答えに仕上がりましたかね。

真剣に書いてみるとわかると思いますが、この問題にちゃんと答えようとすると、あることに気がつきます。それは、「メンタル」とは何か、をわかっていないとそもそも書きようがないということです。(だって、たとえば「Danio rerioについて説明しなさい」って言われたらとりあえずDanio rerioが何かを調べますよね?知らなきゃ書けませんよね?)これに気がつかずに書き上げられてしまった人は多分小論文では点数取れないですね。現代文なら大体は本文に書いてあることだけ整理できれば大丈夫なので最悪なんとかなると思いますが、持つべき視点や考えの深さは足りていない可能性が高いので、今一度自分の思考力を見直してくださいまし。

半分説教みたいな感じでしたが、結局のところこの問題に定まった正解はありません。ただ、メンタル(に限らずですが)について考えるにあたってはメンタルとは何かを分かっている必要があるということが言いたい訳です。この文章だけ見ると当たり前だと感じると思いますが、先程の問、「メンタルが強い」人とはどんな人か、あなたの考えを100字程度で書きなさい。という文章を読んだ瞬間に「まずはメンタルとは何かを定義しないとな」と考えられた人はまあいないでしょう。思考訓練が足りませんな。考えられたという人は、何かについて考える際に潜んでいる仮定に目を向けて定義を見直すということを癖づけられると最高ですね。ただ、森羅万象に対してできる限りこれをやっていると地獄なのでやりすぎない程度で良いでしょう。

 

またまた脱線したわけですが、そういうわけで今回は「メンタルとは何か」ということを深掘りして考えていきます。皆さんも読みつつ考えてみてください。きっと人によってメンタルの定義は違うと思いますし、その定義によってメンタルとの向き合い方も変わってくるはずです。「長々とした御託は読みたくねぇ」という人はここまで飛んでください。

定義するといっても、一手目は何にしましょうか。とりあえず辞書でも引いてみますかね。皆さんもお手元の辞書類を使ってみてください。

ちなみにこういうときに出典を明記しないと剽窃に該当してさよならバイバイなので皆さんも気をつけてください。

 

メンタル

心的。精神的。

[広辞苑 第四版(1991年発行)より]

 

古いせいか、名詞的な用法がありません……。昔は日本でも名詞的な使い方はしていなかったということでしょうか。(新しい辞書の記述は後ほど追記し、加筆修正します)。

 

とりあえず日本語の辞書にはこんな風に書いてあったわけですが、メンタルなんてどうせ外国語由来なので、語源っぽい英語のmentalも引いてみましょうか。

なんで英語まで引くんだ?って思いましたか?「メンタル」を一番近い在来日本単語で言い換えると「精神」とかでしょうか。「メンタル的にキツい」=「精神的にキツい」とるかと思いますが、メンタルと精神は完全にイコールでは無いはずです。「メンタルが強い」はしっくりきますが、「精神が強い」ってしっくりきますかね。飯島は違和感を感じます。「精神が強い」よりは「精神的に強い」あるいは「心が強い」の方がしっくりきます。というわけで、もともと精神という言葉があったのにも拘らず(かかわらず、関わらずは誤記なので入試で記述ある人は注意な)、メンタルという言葉が使われるようになったからには、我々の心の内側を表すのに精神よりも適している理由が元々の単語であるmentalに隠されているのでは無いかと思うわけです。思わないか。思わなくても、語源は気になるっていう感覚の方が良いっすよ多分。

 

mental | adjective

1 relating to the mind: mental faculties | mental phenomena.

・carried out by or taking place in the mind: a quick mental calculation | | started my mental journey.

2 relating to disorders of the mind: mental health | a mental illness.

3 British informal insane; crazy: / think he was a little worried that I might be mental.

[New Oxford American Dictionaryより]

 

ここで“adjective”は「形容詞」の意味です。

結局は日本語で置き換えなきゃ説明できんので完全には捉えきれないわけですが、まあそこはとりあえず目を瞑っておきましょう。瞑りたくない人は英語の勉強をしよう。

これは日本語にすると、

1 mindに関係する、mindの中で為されるまたは起きる

2 mindの乱れ的なもの(disorders)に関係する

(3は省略)

って感じですかね。すると、mindも調べないといけないことに気がつきます。めんどくせえな、なんて言わずに調べましょう。mindなんて調べなくても意味わかるわwwと思った人が次を読んで後悔する顔が目に浮かぶようです。

 

mind | noun

1 the element of a person that enables them to be aware of the world and their experiences, to think, and to feel; the faculty of consciousness and thought: as the thoughts ran through his mind, he came to a conclusion | people have the price they are prepared to pay settled in their minds.

・a person’s mental processes contrasted with physical action: / wrote a letter in my mind.

2 a person’s intellect: his keen mind.

・a person’s memory: the company’s name slips my mind.

・a person identified with their intellectual faculties: he was one of the greatest minds of his time.

3 a person’s attention: I expect my employees to keep their minds on the job.

・the will or determination to achieve something: anyone can lose weight if they set their mind to it.

[New Oxford American Dictionaryより]

 

“noun”は「名詞」ですね。mindには動詞としての使い方もありますが、ここでは省略します。日本語にすると、

1 (個人)の一部(element)で、その人自身が世界や経験、思考、感覚を知覚する(be aware of)ことを可能にするもの、身体行動と対照的な、人のmental processes

2 人の知性的なもの(intellect)、記憶(memory)、知的能力(intellectual faculty)がアイデンティティの人 (意訳でスマン)

3 人の注意(attention)、何かを達成するための意思(will)または決断(determination)

というところまで理解すると、英語の“mental”は「mindに関する〜」という意味の形容詞であることがちゃんと分かるわけです。

みなさんお気づきかと思いますが、日本人はメンタルという単語を名詞的に使っていますが、そもそも英語のmentalには名詞としての用法はないわけですね。(カルチャー英語まではわかりませんが……)。そう考えると、日本語のメンタルは、英語ではmentalよりもmindの方が近そうな気がしてきます。ただし、mentalの意味の2番目に”disorders”という単語があったのを思い起こすと、英語ではしばしばマイナスなニュアンスでmentalという単語を使うようです。また、mindという単語には、知性や注意といった意味合いも含まれているものの、核となる意味は1番目のもので、「意識(awareness)の根源」みたいなニュアンスがあるようです。

 

辞書的な意味はこんなところですかね。ところで、Danio rerioが何かは調べましたか?ググればわかりますが、ゼブラフィッシュのことです。あれ、日本語の字面だけ調べてそこでやめていませんか?ゼブラフィッシュはコイ目の魚で、名前の由来は体の縞模様で、遺伝子の改変がしやすくて実験によく用いられているモデル生物で……などなど。何事についても知らんものに出会ったらある程度は調べるという癖はつけた方が良いですよ。調べないで放っておいたらまた出会ったなんてしょっちゅうですから。それが入試じゃないといいですね。

ところで、モデル生物って何か知ってますか?……っと三度脱線したわけですが、辞書を引く理由は他にもあります。「人間の心は言葉に支配される」的なやつです。超大雑把に言うと、ポジティブな語彙が多い言語を使う人はポジティブになりやすいし、ネガティブな語彙が多い言語を使う人はネガティブになりやすい、とかそういうことです。つまり、完全に決まった状態の自分が言葉を選んでいるのではなく、使っている言葉が逆に自分自身を規定しているという考え方です(ちょい雑ですが)。そう聞いたら言葉の意味、調べたくなりませんか?ならんか。なってくれ。

 

そんなこんなで、皆さんこういう意味の単語を無意識に使って、「メンタル」とか言ってるわけです。知らず知らずのうちに「メンタル」という言葉で己を縛っているんですね。この文章書くまで飯島もメンタルという単語の詳細はよくわかっていませんでした。

ブーメランがかつての己の後頭部に突き刺さっているわけですが、ここまでの内容を踏まえた上で、ここからはもう少し体感に近く、イメージや感覚で「メンタル」を考えていきたいと思います。

先ほど、メンタルと精神はイコールでないと言いましたが、なぜそう感じるのかを試しに考えてみましょう。「メンタル的にキツい」状態と、「精神的にキツい」状態を想像してみてください。さっきはイコールでつなぎましたが、本当に全く一緒ですか?全く一緒と言われてしまうとそこでお終いなのですが、とりあえず僕の感じる違いを書いてみます。「精神的にキツい」と言った方が、「メンタル的にキツい」と言うよりも、心にくるダメージにフォーカスしている感覚があります。メンタルという言葉にすると、心だけでなくてなんとなく体もしんどくなっているという感じです。そんな感じしませんか?別にしなくてもいいです。ふん。あと、個人的には「メンタル的にキツい」は、「精神的にキツい」よりも「精神的に参っている」の方が意味的に近いように感じます。感じませんかね。別にいいっす。

要するに、あるものをそれに近い何かと比較することでそのものの持つ特徴を炙り出そうという訳です。今回の場合は、飯島の感覚だと、メンタルという単語には、精神にプラスしてその影響を受ける身体的な部分を含むような感覚があるのではないか、また、そのせいかダメージを受ける範囲や規模が大きいのではないか、というような結論が出る訳です。メンタル的にキツいとき、何となく体までキツい感じがする感覚、ないですかね?

メンタルは精神のことかと思いきや、案外肉体的要素も含んでいそうです。実際、体の調子は心の調子に影響を与えるようです。証拠は示せませんが、体が疲れている時はやる気も出ないっすよね?実際、英語のmind1番目の意味は意識(awareness)の根源というようなニュアンスがありました。意識には心も体も影響を与えますよね。なんか合ってそうな雰囲気。

 

メンタルに影響を与え得るものは体以外に何があるでしょうか。体までは内的要因なので、すなわち外的要因ですね。これは人によって違いそうですが、とりあえず具体例を出してみましょうかね。「その日の夕飯が何か」とかどうでしょう。好物が出るのか、嫌いな物が出るのか、それによってその日の心の持ちようって変わりませんか?その心の持ちようってメンタルに影響を与える得ませんか?なんか二段構えになってしまって少々強引な感じがするので、他の例も考えてみます。「めちゃめちゃ応援していたアイドルか何かが逮捕された」とか、「仲の良い友達と大喧嘩した」どうでしょう。これはメンタルにくるでしょう。その理由を説明しろなんて言われても困るとは思いますが、確実にメンタルにはきますね。minddisorderといったところでしょうか。アイドルの逮捕と勉強なんて全く関係ありませんが、自分の意識(awareness)を通してその二つは確実に関係し合うわけです。つまり、ショックなできごとやストレスフルなものというのがメンタルに支障をきたす訳です。逆に、「おいしいものを食べた」とか、「仲の良い友達と話せた」とかそんなんでもメンタルには良い影響を与えるはずなんです。

 

すなわち、メンタルを良好な状態に保ちたければ、己にマイナスな影響を与えるものとなるべく距離を置き、プラスに働くものに近づいていけば良いのです。結局大したことを言っていない気がしますが、それがそれぞれ何なのかを考えるのが大事なんですね。

あなたにマイナスな影響を与えるものは何ですか?プラスな影響を与えるものは?

マイナスって何?ストレス、不安、不信、疑念、悲壮、嫌悪、憎悪、嫉妬、憤怒……

プラスって何?リラックス、安心、信用、信頼、嬉しみ、楽しみ、喜び、好き、感動……

自分で書いてて、マイナスの方ばっかり先に出てきたので驚きました(プラスの方は後から対義語をとって書き出しました)。日本語ってそういう言語なんでしょうか。人間、マイナスの方が多い環境に身をおいているのでしょうか……。だとしたら、自然に過ごしていて、プラスなものと多く触れ合うのは難しいかもしれませんね。え、お前の語彙力?性格?

 

ということで、メンタルについて言葉の意味を辿ったり、要素に分解したりして考えてみたわけですが、いかがだったでしょうか。言葉遊びみたいではありましたが、案外悪くなかったのではないでしょうか。結局「メンタルが強い」とは何なんですかね。先述のマイナスに耐性があること?プラスを取り入れやすいこと?あるいは鈍感さ?まとめきれませんね。まあでも何事も深く考えてみることが大切なんです。その上で、調べられるものは調べるんです。自分のメンタルを分解してぜひ掘り下げてやってください。きっと何か見えてくるはずですよ。

実は、最初に出した問は「メンタルとは何か」を考えようとなったときに、「メンタルが強い人はどんな人か」の方が考えやすいから、とりあえずそれを「メンタルとは何か」を考えて掘り下げる際の起りにしてやろうじゃないか、という発想から来ています。「メンタルが強い」状態を定義できれば、「メンタルを強くする」方法も見えてくるかもしれません。

ここから先は、ぜひ皆さんご自身で考えてみてください。

 

長々と御託を並べてきたわけですが、読んでくれた方はありがとうございました。ところで、だいぶ前にテレビで競走馬についてのドキュメンタリー番組をやっていたんですが、その中で馬の飼育の難しさについて調教師の方が話していたことの一部がとても印象に残っています。それは「馬が怖いと感じている時、何が怖いのか馬自身もわかっていない」というものです。これを横で聞いていた人は「馬は馬鹿だな」なんて鼻で笑っていましたが、皆さんはどう思いますか?なんだか気分が上がらない時やストレスが溜まっている時、メンタルがやられている時など、何が本当の原因なのか、自分自身で理解できているのでしょうか。

ヒトも所詮動物の一種です。言語を持つからと言って何でも言語化して理解できているわけではありません。相手に上手く伝えられないときってありますよね。そういうとき、あなたは言語化ができないという状態にあります。あなたは自分について、詳細に言語化できますか?そう考えると、自分自身のことでさえもよくわかっていないのではないかと、そうは思いませんか?何かに立ち向かう時は「まず敵を知ること」です。東進の講師も言っていた気がします。それが自分自身の中にあるのなら、己をよく知ることです。自分のメンタルなら、まずはメンタルとは何かを知り、自分のメンタルのことを知る。これを必要だなと思ってくれたなら、改めて、上の長ったらしい文章をちょっとでも良いので読んでみてください。

 

吉祥寺校 飯島